荒野で14日間上手に楽しむ方法 (Togetter「蔵臼金助氏によるマカロニ・コラム再録+「殺戮と硝煙のマカロニ・ウエスタンナイト」に関するツイートまとめ」)

 東京で大々的にマカロニウエスタンの上映会をやったのは3年前、「シアターN」での“ディ・モールト映画祭”が最後だ。
 その時のパンフレットに掲げたコラムを再掲しておきます♪

荒野で14日間上手に楽しむ方法

 例えば、荒野に立ち枯れた一本の樹を見て、そこがスペイン南部アルメリア近郊のラス・サリニージャスだと特定出来る人たちがいる。彼らの名は“マカロニ・ロケ地研究家”。彼らはグーグル・アースを駆使し、おおよその検討をつけてアルメリアへ飛び、山の稜線と三角測量で、かつてのイタリア製西部劇のロケ場所を割り出す。
 例えばキムタクのCMで、僅か数フレに満たない画面に一瞬流れた曲を聞き、それが未公開マカロニ『男・馬・拳銃』のサントラだと判別出来る連中がいる。彼らの名は“マカロニ・サントラ研究家”。彼らの会話はレコードの商品番号で交わされ、一般人には解読不能だ。
 マカロニウエスタンがあまりに魅力的な要素に満ち溢れていたので、思春期にマカロニに接した彼らは今でも取り憑かれ、映画のディティールを追求し続けているのだ。かく言う私も、エル・インディオが握った銃のハンマー・トップとグリップのデザインから、それがコルト社S.A.A.2ndタイプの前期型であることが瞬時に理解可能だ。
 ジュリアーノ・ジェンマが必殺の一弾を放つ間に、銃器研究家は手元を見て銃を判別し、ガンプレイ研究家は全体の動きを把握、ファッション研究家はカウボーイ・ハットのブリムの形に目を奪われ、サントラ研究家はLPに無い音楽が流れていることを発見、ロケ地研究家は背景の山の稜線でロケ地を確認しているのである。

 と言う訳なので、今回マカロニウエスタンを初めて観る方々、観終わって「ぜんぜんストーリーになってないぢゃん」と失望しないで欲しい。
 マカロニには色々な楽しみ方があるのだ。
 音楽に聴き惚れるのもいいし、銃器に憧れるのも良いだろう。今観ても抜群に格好良いファッション・センスは、ふだんの着こなしの参考にもなる(…言い過ぎか)。
 肩の力を抜いて鑑賞すれば、きっと自分の気に入った要素が見つかる筈だ。
 幸福な気持ちになれることを祈る。


(蔵臼金助)

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