ウインチェスターライフルの誕生とM1866“イエローボーイ” (Togetter「蔵臼金助氏によるウインチェスターM1866「イエローボーイ」解説」)

 『荒野のお尋ね者』(原題:皆殺しのための7挺のウインチェスター)DVD発売記念ということで、マカロニウエスタンに最もよく出てくるライフル、ウインチェスターM1866、通称“イエローボーイ”について解説したいと思います。
 まずは、おさらい。私が初めてマカロニウエスタンと銃器に関して書いた、12年前のコラムです。多少間違いや勘違いもありますが、ご容赦を。

 ざっと、ウインチェスター・ライフルの歴史から始めましょうか。

【ヴォルカニック・ライフル】
 ウインチェスター・レバーアクションのメカニズムは最初、拳銃のデザインから始まりました。リボルバーとは全く異なる連射メカニズムを応用した、ヴォルカニック・ピストルが発表されたのです。このメカニズムは拳銃よりもむしろ、ライフルに向いているのではないかということで、ヴォルカニック・ライフルに進化しました。
 万年筆の発明者でもあるウォルター・ハントが発明した連発銃をルイス・ジェニングスが改造、そのトグル・ロッキング・メカニズムのパテントを得て誕生した、ウインチェスター・ライフルの祖先が、ヴォルカニック・ライフルです。

   ヴォルカニック・ライフル機関部
   銃身の下に弾倉を持ち、トリガー・ガードを兼ねたレバーの操作で装填、撃鉄のコッキング、排莢を繰り返します。


 『夕陽のガンマン』のクライマックス、オルゴールの音と共にイーストウッドが持って現れるのがこの銃です。キラキラ光る銃身、彫刻の施されたレシーバーに乗った小振りの照門が印象的でした。


【ヘンリー・ライフル】
 ヴォルカニックの口径を汎用性のある.44リム・ファイアとし、B・タイラー・ヘンリーが1860年に設計。『続・夕陽のガンマン』で、イーストウッドがチューブ・スコープを装着して使用したのが、ヘンリー・ライフルです。
 映画ではM1866のフォア・ストックを外してヘンリーに見せかけてますが、イーストウッドは“正しいヘンリーの構え方”をしています。ヘンリーは弾倉にスリットが切ってあり、カートを押し出すノブが外部に露出してるので、レシーバー先端を握らないと弾丸がつかえてしまうのです。映画ではM1866で代用してるので銃身を握っても問題は無いのですが、イーストウッドは銃身に触れない、ヘンリー独特の構え方をしているのです。感心しましょう。
 ヘンリー・ライフルは装填が面倒、マガジンチューブのスリットのせいで脆弱になった銃身下部の弾倉破損が頻繁に起きました。それらを改良して生まれたのが、ウインチェスターM1866です。この銃からウインチェスターの名がつけられるようになりました。


【ウインチェスターM1866】
 マカロニに一番多く出てくるライフルです。ネルソン・キングのパテントによりマガジンを改良、カートリッジはフレーム側面のローディング・ゲートから装填出来る様になりました。真鍮フレームを見たインディアンにより、“イエローボーイ”のニックネームがつきます。
 ハリウッド製西部劇が主に当時も生産の続いていたM92を使用しているのに対し、マカロニウエスタンでは、M92、M94、そして、レプリカの生産が始まったM66がメインのロングアームスとなりました。

   『真昼の用心棒』のフランコ・ネロとジョージ・ヒルトン。これから、マッサカ・タイムに向かうところ。真鍮フレームのウインチェスターM66と、真鍮グリップフレーム付きコルトが、マカロニウエスタンの顔でもある。
    『盲目ガンマン』御用達M66改は、盲目でもかまえやすい扇形バットストック、銃身に触れても熱くない延長されたフォアストック、杖代わりに使える銃身先端のバヨネット等を備えてる。
   レプリカの量産のおかげで、イタリア製西部劇に出てくるカスタム・ライフルのベースは、M66が中心となった。写真は『さすらいの一匹狼』に登場したテレスコープ付きウインチェスター。
   イエローボーイを駆使する、“サルタナ”シリーズ1作目のジャンニ・ガルコ。
   今回DVDがリリースされた、アンソニー・ステファンの『キラー・キッド』。この作品を観ても、彼は銃よりはライフルさばきの方が上手だ。
   『殺しが静かにやって来る』でM66を使う保安官(フランク・ウォルフ)。雪でレバーが凍り付き、肝心の時にライフルを使えない。


 以上、ウインチェスターライフルの誕生と、M66“イエローボーイ”までを駆け足でたどってみました。後日、有名な“西部を征服した銃”ウインチェスターM73から、ロシア軍御用達M1895迄を解説したいと思います。


(蔵臼金助)

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