『ガンマン大連合』 (Togetter「蔵臼金助氏による『ガンマン大連合』コラム再録ツイートまとめ」)


 ガンマン&用心棒の皆さん、こんばんは。リクエストを頂きましたので、SPOマカロニDVD-BOXリーフ用に執筆した、『ガンマン大連合』の原稿を再録いたします。

ガンマン大連合(1970)
VAMOS A MATAR, COMPANEROS

『レア・ガン大連合』

 今回はマカロニ大学ウェスタン学科のクラス編成をしたいと思います。まずは、簡単な設問から…。吉祥寺に在りますホテル「じょうじヒルトン」で、部屋が用意されています。どの同居人がいいか、選択して下さい。

 1.メキシカン・ミュージックでノリノリのトーマス・ミリアン
 2.カメを調べているフェルナンド・レイ
 3.入浴中のアイリス・バーベン
 4.睡眠中のジャック・パランス
 5.機関銃の手入れをしているフランコ・ネロ

 …さて、選びましたか?

 1.を選んだ音楽好きの貴方は、【マカロニ・サントラ研究家】です。
 2.を選んだ貴方は、【マカロニ動物研究家】。砂漠でカメがひっくり返っていたらどうするか、引き続き考えてみて下さい。
 3.を選んだ貴方はもう一度ふりだしに戻り、冷静になってから3以外を選択して下さい。それでも再び3を選んだら、【マカロニ女優研究家】へどうぞ。
 4.をチョイスした貴方はモグラ責め。
 そして、5を選択した貴方は【マカロニ銃器研究家】の適性があります。先へ進んでみましょう。

 ファンにとりわけ人気の高いにぎやかな本作「ガンマン大連合」は、全てのマカロニ研究家を満足させる要素がいっぱい詰まっております。豪快なアクションとユーモア。友情と裏切り。サントラはいいし、女優はきれいです。自動車やカメ、モグラ、隼も登場します。グルメファンにはバナナや焼き鳥も出てきますね。そして、レアな銃器もぎっしり…。

 ヨド(フランコ・ネロ):スウェーデンから来た武器商人は登場時、ショルダーホルスターにニッケルメッキされた3インチ銃身のダブルアクション・リボルバーを差しています。その後、左腰の革製ホルスターにオートマチックを入れてますが、私は「豹/ジャガー」で使ったのと同じアストラM400かとずっと思っていました。モーゼルが登場した「殺しが静かにやって来る」を制作したのと同じ年に、コルブッチは本作の姉妹編「豹/ジャガー」を撮ります。その作品の主人公、ポーランド人傭兵のコワルスキーが使うのは、スペイン製9oの自動拳銃でした。ヨドも同じ銃を使っているんだな…と長い間思い込んでいたのですが、今回よ〜くチェックすると、それはアストラM400の先祖にあたる、大変に珍しいカンポ・ギロM1913である事が判明いたしました。一緒に驚いて下さるとうれしいです。

  『豹/ジャガー』でポーランド人傭兵セルゲイが使用する、アストラM400。
  『ガンマン大連合』でスウェーデン人武器商人ヨドが使用する、カンポ・ヒロ。


 クライマックスでネロは、二挺のダブルアクション・リボルバー、ウインチェスターM92、「続 荒野の用心棒」以来のトレードマーク、腰だめで撃ちまくるフェイク・マシンガンの乱射を見せつけます。相変わらず弾帯が動かないダミーのマシンガンでありますが、見た目で昔よりマキシム機関銃に近付いているのが好感が持てます。検問所を突破するシーンでは懐かしい、銃口がたくさん空いた“ジャンゴ・マシンガン”も登場しますよ。そして最後の決闘では、『ガンマン無頼』『続 荒野の用心棒』等で使い慣れた、イタリア製レプリカのコルト、71/2インチのS.A.A.を使います。まるでこの映画は、フランコ・ネロのアクション映画の集大成、銃を中心とした歴史の総決算みたいですね。

 バスコ(トーマス・ミリアン):数タイプのS&Wダブルアクション・リボルバーとS.A.A.を使い分けてます。二挺拳銃は5インチのミリタリー&ポリスでした。決闘で使われるのは、Model3の発展型であるダブルアクション・リボルバー。これはマカロニによく出てくる銃ですが、S&W純正の物ではなく、ハーリントン&リチャードソンかスペイン製コピーかもしれません。列車の中で突きつけられるアップも出てきますので、じっくり御覧下さい。ピースメーカーらしく見せようとしているのか、エジェクターが壊れているのか、トップブレイクの中折れ式リボルバーなのに、エジェクターチューブがバレル横に追加されています。

 ジョン(ジャック・パランス):鐘楼で待ち伏せする際に、スライドアクションの散弾銃を使います。この後、ヨドが双眼鏡を使ってM92で撃つので、細かく描写されることはありませんが、マカロニウェスタンにスライドアクションの散弾銃が出てくるのは珍しいことです。事例は「荒野の復讐」と「ミスターノーボディ」くらいでしょうか。

 ローラ(アイリス・バーベン):列車内でバスコ、ヨドに突きつける拳銃が珍しいものですよ。たぶんハウダ・ピストルと呼ばれる、水平二連の銃身を持つ銃です。天鵞絨を敷いた革製専用ケースに、ペア・ガンとして収まっておりました。


 ずいぶん色々な銃が出てきましたね。これで貴方も立派な【マカロニ銃器研究家】です。今後はマカロニDVDを全て買い揃え、私と共にさらなる底なしの銃器研究の泥沼へと足を踏み入れてみましょう。


(蔵臼金助)

Back