西部劇に登場した珍しいロングガン解説(ショットガン篇) (Togetter「蔵臼金助氏による、西部劇に登場した珍しいロングガン解説(ショットガン篇)


 西部劇に登場した珍しいロングガンの続きです。今回は、ショットガン篇。
 水平二連散弾銃については、『暁の用心棒』コラムの時に解説いたしましたので、こちらは連発式散弾銃について触れます。


【レバー・アクション・ショットガン】
 ブローニングに新型連発散弾銃の設計を依頼したウインチェスター社は、当初レバー・アクションに拘りました。最初の連発式散弾銃として開発されたのが、レバー・アクションのウインチェスターM1887です。
 12ゲージと10ゲージのものが製造され、1901年には10ゲージのみ使用のM1901が登場。M1887をソウド・オフしたものが、『ターミネーター2』でシュワルツェネッガーがジョン・ウェインへのオマージュを込め、くるりと振り回した散弾銃です。『ワイルド ガン』ではフレーム上部からシェルを装填する描写も見られます。『ロイ・ビーン』でポール・ニューマンが撃ちまくったのは、M1901です。


【ウインチェスターM1912】
 M1897は有鶏頭(エクスターナル・ハンマー)の散弾銃ですが、『ワイルドバンチ』の冒頭の銃撃戦で、クレイジー・リーだけがモダンな形状の散弾銃を所持してます。それが、インナー・ハンマーのレシーバーを持つ、M1912です。T.C.ジョンソンが設計、1912年に発表されて以降、現代のレミントンM870などに見られる様に、散弾銃のレシーバーはストリーム・ラインが主流となっていきました。


【ウインチェスターM1897】
 この銃に関しては、『ワイルドバンチ』コラムの際にくわしく解説しておりますので、そちらを参考になさって下さい。


【ウインチェスターM1200】
 イタリア製西部劇において連発式散弾銃が使われたことは殆ど無く、『ミスター・ノーボディ』『ミスター・ノーボディ2』でウインチェスターM1897が登場したくらいです。しかし、常にショットガンを愛用するトニー・アンソニーは、『荒野の復讐』でスライド・アクションの散弾銃ウインチェスターM1200を用います。M12のコストダウン発展型として開発されたこの銃は、さすがにそのまま使うと違和感を感じたのか、フレームにM1873の様なプレートを継ぎ足し、先台を真鍮バンドとリベットで飾り立てたりして、レトロ感を出す工夫が見られます。


   『荒野の復讐』でトニー・アンソニーの使う、ポンプアクション・ショットガン。この作品はマカロニウエスタン唯一の3D映画で、写真の後ろにいる美女は無名時代のヴィクトリア・アブリルです♪
   『ガンマン大連合』でジャック・パランスが使用した、形式不明のポンプアクション・ショットガン。



【スペンサー1882】
 スライド・アクションを初めて設計したクリストファー・M.スペンサーが1882年にパテントを取得した、インナー・ハンマー・デザインの散弾銃です。一見その近代的なフォルムが西部劇に登場するのは誤りではないかと錯覚させますが、立派な、開拓期に使われたショットガンです。フォアエンドを手前に引くと、キャリアーがレシーバー上部に飛び出すのが特徴です。『3時10分、決断のとき』で、保安官の一人が携帯してます。



(蔵臼金助)

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